ロックな恋はほろ苦い風味
「好き」という感情
「好き」という感情は本当に複雑だ。
それは一直線の場合もあれば、多方面に広がっている場合もある。
ロックで激しい曲調のときもあれば、胸を痛めるバラードを奏でるときもある。
好きなときもあれば、嫌いなときもある。
好きで嫌いなときもある。嫌いで、でも相手が大切なときもある。
恋愛で感じる気持ちは本当に沢山あって、それはとても一言で語ることが出来ない。
やはり恋愛はロックだ。
一本通行の恋
大嫌いな人がいた。
その人は嘘つきで、我がままで、自分勝手で、僕はその人に振り回されてばかりだった。
でも死ぬほど大切だった。
なにが大切か、どこに惹かれているのか、僕には全く分からなかったけど、愛おしくて仕方がなかった。
この感情は一体どこから来るのだろうか、どれだけ考えても答えは出なかった。
彼女には何人も恋人と呼べる人間がいたと思う。
そして僕もその1人だった。
僕は彼女にとって、困ったときや暇なときに呼ぶことが出来る、ただの都合の良い人間の1人に過ぎなかった。
大嫌いだった。
人間としても、女の子としても。
嫌いすぎて反吐が出る。
でも大好きだった。
彼女に呼び出されると嬉しくて仕方がなかったし、見え透いた嘘をつかれたときは、悲しくて壊れそうだった。
季節が移り変わるように変化していく感情は、僕が彼女をただの他人だとは感じていない明白な証拠だった。
だからたとえ何をされても、僕は激しい煩悶と、長い葛藤の末、最終的には彼女の存在を認めてきた。
ある日彼女は恋をした。恋人の1人である僕に平気でその悩みを相談してきた。
彼女の僕に対する感情なんて、ようはその程度のものでしかなかった。
それは職場の既婚者の上司に対する叶わない恋。
僕の彼女に対する恋も報われはしないけれども、彼女のそれも、決してどこかに向かうことは出来なかった。
自分の恋を語るときの彼女は、悔しいけれども輝いていて、その輝きのせいで、僕の心には影が生まれた。
彼女が恋をしているその上司の男性が、愛人と駆け落ちをしたと聞いたとき、僕はこの世界が少しだけ嫌いになった。
もちろんその事実は数々の不幸が重なっただけで、別段この世界を象徴している訳ではない。
むしろこういうことの方が一般的には少数で、多くのもっと綺麗なことも沢山あるだろう。
でも僕は確実にこの世界を少しだけ嫌いになった。
この感情が積み重なれば、僕は確実に生きるのが嫌になるだろうと思えた。
いなくなった片思いの相手に対しての恨み言を話す彼女に対して、僕はもう彼女と二度と係わり合いはもたないことを決めた。
ロックな恋は、まるで砂糖を入れていないコーヒーのようにほろ苦い風味だった。
